旅館業の「常駐義務」、守らないと許可取消し? 豊島区・台東区・荒川区・大阪市・京都市の条例を条文で確認
「常駐しないと営業許可取消し」という報道がありますが、条文ではどうなっているのか。豊島区・台東区・荒川区・大阪市・京都市の常駐義務と、違反したときの罰則を、条例と旅館業法の条文で確かめました(2026年11月7日時点)。
旅館業で、常駐しないと営業許可取消しになる条例を作った自治体はないと思うのですが。
誤解を招く報道が多いので、条文の通り報道していただきたいです。
そこで、常駐を求める条例を作った(作ろうとしている)5つの自治体について、常駐の義務と、守らなかったときにどうなるかを条文で確かめました(2026年11月7日時点)。
先に結論
- 常駐しないだけで、条例によって許可が取り消される自治体はありません。
- 条例に罰則があるのは荒川区と京都市だけで、どちらも「命令」に違反したときの過料5万円以下です。常駐しなかったこと自体に罰則が付くわけではありません。
- 豊島区・台東区・大阪市の条例には、罰則がありません。
- 許可の取消し・営業停止は国の旅館業法 第8条による処分で、条例の罰則とは別物です。
自治体ごとの常駐義務と、違反したとき
豊島区
- 常駐義務:条例 第6条第2項「営業者は、営業施設に営業従事者を常駐させなければならない。」(営業者自らが常駐する場合を除く)
- いつから:令和8年(2026年)12月16日施行。施行日の前に許可を受けた施設・申請中の施設には適用されません(附則第2項)。
- 違反したとき:条例に罰則はありません。区長による指導・助言、勧告、勧告に従わないときの公表(第10条の2・第10条の3)。
台東区
- 常駐義務:条例 第6条第4号「旅館業の施設には、適正な運営を行うため、営業時間中に営業従事者を常駐させること。」(2026年より前からある規定)
- 2026年の改正:令和8年10月1日施行。違反への指導・勧告(第12条)、措置命令(第13条)、公表(第14条)を新設。
- 違反したとき:条例に罰則はありません。措置命令に従わなくても、条例による罰金・過料はありません(公表の対象にはなります)。
荒川区
- 常駐義務:条例 第6条第5号「旅館業の施設には、営業時間中に営業従事者を常駐させること。」
- 違反したとき:区長が常駐させるよう命令でき(第13条)、その命令に違反した者は5万円以下の過料(第15条)。平成30年からある規定です。
- 2025〜2026年の改正は、区の公表資料では確認できませんでした。
大阪市
- 常駐義務:条例 第9条第12号「宿泊者が宿泊施設(下宿営業に係るものを除く。)を使用している間、営業者又はその代理人、使用人その他の従業者が当該宿泊施設に係る旅館業の施設に常駐すること」
- いつから:令和8年(2026年)10月30日施行。経過措置はなく、今ある施設にも適用されます。
- 常駐の場所:市はパブリックコメントの回答で、施設から1,000m以内の管理事務室に、宿泊者がいる間、従業員等を常駐させれば基準を満たすとしています(宿泊者がいないときの24時間常駐までは求めない)。
- 違反したとき:条例に罰則はありません。条例の勧告・公表(第16条)の対象にも、常駐義務は入っていません。
京都市
- 旅館業(今の条例):第15条第13号で、人を宿泊させる間、施設の内部、または施設外玄関帳場などの場合は「施設におおむね10分以内に到着することができる場所」(要綱でおおむね800m以内)に駐在すること。
- 違反したとき:勧告 → 命令(第20条)→ 命令に違反した者は5万円以下の過料(第26条第3号)。命令や許可取消しをしたときは公表できます(第23条)。
- 民泊(住宅宿泊事業)の条例:第12条第7項で、現地対応管理者を届出住宅の内部またはおおむね10分以内の場所に駐在させる義務。違反は勧告 → 命令 → 命令違反で5万円以下の過料(第22条)。
- 2026年の案(まだ決まっていません):簡易宿所・民泊とも、原則として施設内か近くの建物(境界から10m以内)への常駐を義務付ける骨子案が、検討会議(令和8年11月2日)に出されています。パブリックコメントを経て、2月の市会に条例改正案を出す予定とされています。
「条例の罰則」と「旅館業法の許可取消し」は別物
報道では一緒に語られがちですが、この二つは根拠も手続きも別です。
条例の罰則(自治体が決めるもの)
- 条例が自分で定める罰則です。今回の5つの自治体では、荒川区と京都市の「命令に違反したときの過料5万円以下」だけです。
- 過料はお金を納める行政上の罰で、過料を科されたからといって、それで許可が取り消されるわけではありません。
- 豊島区・台東区・大阪市の条例には、罰則そのものがありません(指導・勧告・公表などはあります)。
旅館業法の許可取消し・営業停止(国の法律が決めるもの)
- 許可の取消しと1年以内の営業停止は、旅館業法 第8条が定める処分です。条例が決めるものではありません。
- 第8条の要件は、営業者が「この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき」などです。
- このほか旅館業法には、改善命令(第7条の2)と、その命令や停止命令に違反したときの罰則(第10条・第11条)があります。どれも旅館業法の仕組みで、条例の過料とは別のものです。
つまり、「常駐していない → 条例の罰則で許可取消し」という仕組みは、条文上はありません。条例の罰則は条例の中で完結し、許可の取消しは旅館業法 第8条の要件に当たるかどうかで判断されます。
参考にした資料
- 豊島区:旅館業法施行条例 新旧対照表・改正のお知らせ
- 台東区:旅館業法施行条例の改正・新旧対照表
- 荒川区:荒川区旅館業法施行条例(例規集)
- 大阪市:旅館業法の施行等に関する条例・パブリックコメントの結果
- 京都市:旅館業条例・規則・要綱の三段表・民泊規制案(検討会議 資料2)
- 国:旅館業法(第7条の2・第8条・第10条・第11条)
【ご注意】2026年11月7日時点で各自治体が公表している資料をもとにした、一般的な情報です。条例は改正が続いています。実際の運用や個別の施設への適用は、所管の保健所にご確認ください。
この記事は、稲岡泰宏が Facebook グループ「民泊型旅館業交流会」 に投稿した文章(2026年11月4日)をもとにしています。