管理棟方式なら許可が取れる? 2026年条例改定対応
東京23区の旅館業法施行条例の改正で、玄関帳場の必須化や従事者の常駐が求められるようになりました。昔からある「管理棟方式」に宿泊棟ごとの玄関帳場を組み合わせ、改正後の要件を満たしたまま運営する構成と考え方をまとめました。
23区の旅館業法施行条例の改正が出そろいました。「玄関帳場(フロント)を必須にする」「従事者の常駐を求める」という方向の改正が多く、無人型の簡易宿所は大きな影響を受けます。
結論から言うと、昔からある「管理棟方式」に、宿泊棟ごとの玄関帳場を組み合わせれば、改正後の条例の要件を満たしたまま運営できる、と考えています。以下、構成と考え方を詳しく書きます。
1. まず前提:「許可の要件」と「営業中に守ること」は別物
旅館業の許可(旅館業法 第3条)で審査されるのは、構造設備、設置場所、欠格事由の3つだけです。
構造設備の基準は、次の3段構えになっています。
- 旅館業法施行令 第1条第1項第2号:玄関帳場、またはそれに代わる設備
- 旅館業法施行規則 第4条の3:玄関帳場に代わる設備の中身(緊急時の対応、宿泊者名簿の正確な記載、鍵の受け渡し、出入りの確認)
- 施行令 第1条第1項の最後の号:区が条例で上乗せする構造設備の基準
今回の改正で区が上乗せしたのは、主に次の2種類です。
- 構造設備の基準:玄関帳場、従事者の常駐用の設備、住戸との区画など → 許可の要件
- 営業者の義務:従事者の常駐など → 営業中に守ること
つまり、許可の段階では「常駐用の設備があるか」を見られ、常駐そのものは「営業中に守る義務」です。ここを分けて考えると、構成の組み立て方が見えてきます。
2. 管理棟の構成
管理棟は、事務所・倉庫として借りた一室で構いません。場所の指定は特にありません。旅館業法、施行令、施行規則のどこにも、管理棟の位置や「宿泊棟と同じ敷地」という定めはありません。
「同一建物内」「同一敷地内」という条件は、条例にはなく、自治体の規則(区長が定める施行規則)に書かれている場合があります。
規則への対応は任意です。住民に義務を課したり権利を制限したりするには、条例によらなければなりません(地方自治法 第14条第2項)。条例から委任を受けていない規則の条件は、許可の要件にはなりません。
管理棟に置くもの
- 事務所(従事者の常駐場所)
- リネン庫
- トイレ
- 更衣室
- 必要に応じて、ロビーと対面カウンター(管理棟側の玄関帳場)
管理棟で行う業務
- 宿泊者名簿の管理
- 宿泊棟の玄関帳場のカメラ監視
- 緊急時の連絡の受け口
ポイントは、管理棟を旅館業の「施設」の一部として申請することです。申請書の施設の範囲に、宿泊棟と管理棟の両方を入れます。
3. 宿泊棟の構成
各宿泊棟の、客室に入る手前に玄関帳場を設けます。
戸建ての場合
- 玄関の内側に、扉を1枚追加して「内玄関」を作る
- 玄関と内玄関の間に、記帳台を置く(下駄箱の天板を記帳台にするのでも可)
- 内玄関から先が客室(宿泊室)
注意点
- 玄関帳場の部分は、客室の面積から差し引きます
- 簡易宿所の客室延床面積の基準(施行令 第1条第2項)を満たしているか、差し引いた後の数字で必ず確認してください
設備の例
- 入口は暗証番号式の電子錠
- カメラとインターホンで、管理棟とつなぐ
- 自動火災報知設備が鳴ったら、管理棟と警備会社に自動で通知
- 非常用の連絡ボタンは、管理棟に直通
4. 常駐の考え方
各区の条例は「施設に常駐」「営業施設に常駐」といった書き方をしています。
管理棟を「施設」に含めて申請していれば、管理棟にいる従事者は「施設に常駐している」ことになります。宿泊棟(戸建て)の中に人がいる必要はありません。
なお、「駆け付けでは不可」「戸建ての中に常駐」といった運用は、旅館業法に根拠が見当たりません。
5. 面積の制限がある区への対応
千代田区のように面積の要件がある区では、宿泊棟を複数まとめて1つの施設として申請し、合計の面積で要件を満たす方法があります。
管理棟1か所に対して宿泊棟を複数つなげる形は、運営面でも効率がよくなります。
6. 申請の進め方
- 施設の範囲を図面で示す(管理棟と各宿泊棟、それぞれの玄関帳場の位置)
- 構造設備の基準ごとに、どの設備で満たすかを一覧表にする
- 常駐の体制(どこに、誰が、何時から何時まで)を説明資料にまとめる
- 保健所に事前相談し、施設の範囲の考え方を確認してから本申請する
詳しい解説:管理棟方式なら許可が取れる? 23区全区適合(d2o の講座)
【ご注意】この記事は、法令の条文をもとにした個人の解釈と事業上の経験を共有するもので、法律上の助言ではありません。区ごとに条例の条文、施行日、経過措置が異なります。必ず各区の条例の原文で確認してください。最終的な判断は、各区の保健所が行います。申請の前に必ず事前相談をしてください。建築基準法(用途・用途変更)、消防法、東京都建築安全条例、用途地域の制限などは、旅館業の許可とは別に満たす必要があります。管理棟は建築基準法上は事務所、宿泊棟は宿泊施設として扱われます。この内容を参考にして生じた損害について、投稿者は責任を負いません。